米アマゾン・ドット・コムが、処方薬のインターネット販売を手掛けるピルパックの買収を発表しました。

アマゾンは、参入のハードルが高いとされてきた処方薬の領域でも拡大の兆しを見せています。日本では処方薬の対面販売が義務付けられるなど他国とは違った事情が存在していますが、アマゾンは今後日本でも「ネットで薬」を促していく可能性もあります。

ピルパックはネットで処方箋を受付、1回の服用分を小分けにして配送しており、高齢者を中心に利用が広がっています。今回の買収でアマゾンが処方薬の販売に本格的に参入することになります。

アメリカでは2017年12月、ドラッグストアチェーンのCVSヘルスが医療保険大手のエトナを7兆円超えという巨額を投じて買収すると表明しました。処方薬に関連する企業がアマゾンの参入に備え、大型のM&Aを誘発しているようです。

一方の日本では、医薬品のネット販売のハードルは高く、店頭で購入できる一般用の医薬品でさえ、2014年にネット販売が解禁されたばかりです。
アマゾンジャパンも2017年から、大衆薬の一部を指す「第1類医薬品」をサイトで取り扱うようになりました。ですが規制上、実店舗を備えなければならず、薬局「アマゾンファーマシー」を設置し、薬剤師を常駐させています。
さらに副作用に配慮して一部製品では対面販売が義務付けられています。ネット販売のケンコーコムは、ネットでの取り扱い品目を増やすように求め、東京地裁に訴訟を起こしましたが、2017年に退けられ、東京高裁に控訴しています。

大衆薬を買い求める消費者は、風邪などの場合、早さを優先してネットよりもドラッグストアを選びやすい傾向があります。調査会社のアンテリオによれば、2017年中の一般用医薬品市場のうち、ECサイト経由は3.6%程度でした。
その一方、医師が書いた処方箋を確認できさえすれば処方薬は安全で、むしろネットに向いているとの見方もあります。高齢者や過疎地域住民などにとっての利点も大きいと考えられます。薬剤師の説明をネット上で受ける「遠隔服薬指導」が愛知県などの国家戦略特区で始まり、調剤薬局大手のアインホールディングスが参加します。

アマゾンの動きを受けて、副作用リスクなどを見極めながらネットの利便性を取り入れる試みが加速していくかもしれません。

[参考記事:2018/06/30 日本経済新聞]

ついに米アマゾンが医薬品分野への本格参入に向けて動き出しました。アマゾンはピルパックの買収を通じて、ヘルスケア分野へ参入するとともに、幅広い医薬品ネットワークを手に入れることになります。今回の買収は、大手ドラッグストアチェーンにとっては大きな脅威でしょう…
アマゾンの企業理念は「地球上で最もお客様を大切にする企業」ですが、世界征服を狙っているかのような成長と侵略(?)。私もアマゾンは便利でよく利用していますが、アマゾンが参入することにより脅かされた業界は気が気ではないですよね。