フリーマーケットアプリのメルカリは9日、6月の東証マザーズ上場後、初となる2018年6月期の連結決算を発表しました。
米国への先行投資がかさみ、最終収益は70億円の赤字となりました。
浮かび上がったのは国内のフリマ事業に依存する収益構造です。決済など新規事業を育てる一方で、伸びないサービスは撤退するなど、早くも事業の選択と集中に乗り出しています。
「メルカリのゴールは短期的な収益性を高めることではなく、中長期的に成長することだ」と、山田進太郎会長兼CEOは強調しました。
2018年6月期の売上高は62%増の357億円となっており、それをけん引したのは国内のフリマ事業です。アプリのダウウンロード数は7,570万件と、前年同期末から36%増加し、月に1回以上利用する人も1,075万人と、230万人増加しています。
しかし米国事業が足を引っ張っているようです。知名度が低い米国での利用者を増やすため、上場で得た資金や国内で稼いだキャッシュを広告宣伝費などに回しています。
フリマで圧倒的な強さを持つ国内で稼ぐ力は高まっていますが、ここで改めて浮かび上がってきたのは、売上高の大半をフリマアプリで得る手数料
が占めているという点です。
経済産業省の調査によると、2017年のフリマアプリの市場規模は4,835億円と、前年から58%増えています。
今後も市場はさらに拡大するとみられていますが、メルカリの利用者の伸びはいずれ鈍化します。
上場により株主の厳しい目にさらされるなか、フリマに次ぐ収益をどう育てていくかが課題です。
山田会長が次の柱候補として意気込んでいるのは、子会社ソウゾウを通じて今秋の参入を計画している旅行関連事業です。
メルカリは旅行事業の詳細については明らかにしていませんが、同社が自らツアーやチケットの手配や販売などをするのではなく、スマホのアプリを使って旅行者が交流をするといった新しいサービスになるとみられています。
これまでの新規事業はフリマアプリとの相乗効果を重視してきましたが、旅行分野ではフリマと切り離してゼロから新しいサービスを考えるといいます。
もう一つの柱と見据えるスマホ決済は、金融関連子会社のメルペイが今期中にサービスを始めます。フリマでの購買データを信用情報として活用するなど、幅広いサービスと連携させます。
一方で、利用者が伸び悩む事業は撤退に踏み切っています。
8月中にはブランド品に特化したフリマサービスなど既存の3サービスを停止します。5月に閉鎖した地域コミュニティアプリ「メルカリアッテ」を含めると、3ヶ月間で4つものサービスをたたむことになります。
山田会長は一連の撤退について、「他会社の判断だったら継続したかもしれないが、フリマアプリと同じ成長スピードを目指すうえでシビアな判断をした。今後もチャンスがあれば即参入、伸びなければ即撤退」と語りました。
ただ、メルカリが新たに注力する分野は激戦区でもあります。スマホ決済は米アマゾンドットコムも参入しており、ヤフーや楽天なども強化していく見込みです。
メルカリ同様、決済を次の柱に据えるLINEも格安スマホ会社の株式の過半数をソフトバンクに譲っており、タクシー配車サービスから撤退するなど選択と集中を進めています。
メルカリは今後、世界で1,000人の採用を計画するなど、人材獲得に積極的に動いています。世界全体でIT人材の獲得競争は厳しくなっており、人材をどの事業に集中させるかが極めて重要となってきます。
[参考記事:2018/08/10 日本経済新聞]
メルカリが上場しましたが、初めての決算では大幅な赤字となりました。これから挽回なるか!?多くの新規事業が動いている中、今後力を入れていくべき事業、撤退すべき事業、その選択と集中が迫られています。
この判断はとても重要なことで、いかに将来性を見極め早めに判断するか、またその判断したことをいかに実行し次の手を打つか、経営者としての手腕が期待されます。この経営判断は小規模の事業でも大切なことですね。内部環境、外部環境、しっかり見据えていきたいものです。